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澪「風邪の日」

_SL160_
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2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:38:53.32 ID:QxzA5IlA0
朝、目覚ましの音で目を覚ました私は熱っぽかった。
体がだるく、頭が重くてボーっとする。

「風邪ひいちゃった……?」

体温計を汗ばんだ腋に挟み測定終了の電子音を待った。
こういう何かを待つ短い時間って妙に長く感じちゃう。

ピピッと鳴った体温計のデジタル画面を見ると平熱より2度近く高い数値を表示している。

「38度4分……完全に風邪だ」




4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:43:59.02 ID:QxzA5IlA0
学校は……どうしよう……。

「他の人にうつしちゃったらまずいよな……」

今日は学校を休もう。
ちょっと位休んでも問題ないよね。

「ママに連絡してもらおう」

ふらふらしながら一階に向かった。
階段は手すりを掴みながら慎重に。




5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:49:46.61 ID:QxzA5IlA0

台所ではママが忙しそうに朝食を作っていた。
私はちょっと弱々しい声で言う。

「ママ」
「あら、おはよう」
「おはよう」

ママって呼ぶ癖はまだなおらない。
ママは「お母さん」ではなく、「ママ」って感じだから……なんて言い訳だよね。
おまけにちょっと意味がわからないし。

「風邪をひいちゃったみたい……」
「風邪?」
「うん、熱も38度4分あるの」
「あら」

ママに対してだとちょっと口調が甘えた感じになっちゃう。




8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:57:53.65 ID:QxzA5IlA0

「学校はどうする?」
「今日は……休もうかな」
「そう、じゃあ連絡しておくわ」
「うん、私もう少し寝るね」
「わかったわ」

そう言うと私は自分の部屋に戻った。
階段を登っただけで息が切れてしまった。

部屋に入り再びベッドに潜り込む。
いつもなら慌ただしく学校に行く準備をしている平日の朝の時間に、こうしてベットに潜り込んでるってちょっと得した気分。
得した気分なんだけど……ふと軽音部のみんなが頭に浮かんだ。

「律ぐらいには連絡しておくか」

そう呟くと携帯を手に取った。
電話帳からではなく、着信履歴から発信する。
着信履歴の一番上には律の番号が居座る時間が一番長い。
その理由は言う必要もないよね。
もちろん発信履歴も一緒。





9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:03:03.97 ID:QxzA5IlA0

「もしもーし」
「あ、律。私」
「わーかってる。どした?」
「実は風邪をひいたみたいで……」
「え、風邪?」
「うん」
「へー、澪が風邪かー」
「ん?」
「いや、ちょっと珍しいなーって」
「そうかな?」

そういえばそうなのかもしれない。
自分がいつ風邪ひいたとか、一々憶えてないけどそんなになかった気もする。




14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:09:56.89 ID:QxzA5IlA0

「学校休むのか?」
「うん」
「そっかあ、澪休みかあ……」
「どうした?」
「いや、何でもないよ」
「……」
「みんなには私から伝えておくよ」
「うん、お願い」
「はいはーい」

切れた電話を耳元から離し、ふうっと溜息をついてみた。

「うう……だるい」

風邪をひいたら寝るのが一番。
そう思い、布団を掛け直し目を閉じた。




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:15:22.36 ID:QxzA5IlA0
―――
――


「はいはーい」

そう返事をして電話を切り、食べかけのトーストをかじった。
電話をしている間にちょっと硬くなってしまった。

「そっかあ、澪休みかあ……」

さっきも言った台詞を声に出して呟く。

「ねーちゃん、先行ってんぞー」
「おーう」

機械的に返した返事のあとに玄間の扉が開いて閉まる音がした。
私もそろそろ。




17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:22:50.31 ID:QxzA5IlA0

椅子から立ち上がり、空いた食器を流し台に置いた。
スティックを差し込んだ学校指定のバックを背負い、さっきの澪との電話を思い出しつつ玄間にむかう。

「いってきまーす」

そう言うと扉を開け放ち、外に出た。
黙って通り慣れた通学路を歩く。
わざわざ待ち合わせなんてしなくても、澪とはいつも一緒になる。
別に意識してるわけではないけど、それが自然な事になってるから。
でも今日は一人。
いつもなら澪と話し、元気に振り回してる両手も今はおとなしく制服のポケットの中。
ちょっとうずうずしてる。

笑い声をあげながら歩いてる同じ学校の2人組を追い抜いた。
一人だと自然と速足になる。
楽しくお喋りをしながら歩く通学路はあっという間なのに、一人で黙って歩くと妙に長く感じてしまう。
今の私はすっごいおとなしそうな女の子に見えるかも。
別に普段明るく振舞おうなんて意識してるわけではないけど、みんなと……澪といると自然とそうなる。

そんなことを考え、追い抜いた人の数を数えながら学校へ歩いた。




20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:28:43.75 ID:BEWuBjTdP
これは期待




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:29:44.87 ID:QxzA5IlA0
―――
――


「おはよう、りっちゃん」

教室に入った私にムギが待っていたかのように声をかけた。

「おはよー、ムギ」

カバンを自分の席に置き、ムギの席に歩み寄った。
教室は話声で朝から賑やかだ。

「あれ?澪ちゃんは?」
「ああ、澪は今日休みだよ」
「え?休み?」
「なんか、風邪ひいたみたいでさ」
「そうだったの……」
「でも朝電話で話した時は元気そうだったから大したことないのかもな」
「そう」

ムギは安心したようにそう言うと、ちょっと微笑んだ。




22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:36:22.77 ID:QxzA5IlA0
「唯は?」
「唯ちゃんはまだみたいね」
「また遅刻ギリギリだったりしてな」
「憂ちゃんが居るから大丈夫じゃない?」
「それもそうか」

そう言ってる内に唯が教室に入ってきた。

「おはよ~」
「おはよう唯ちゃん」
「今日はちゃんと時間通りに来れたな」
「むう……いつもちゃんと起きてるもん。もちろん一人で!」
「わかったわかった」
「あれ?」

唯は話声で賑わう教室を一度見渡し、私達に向き直った。




23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:42:25.55 ID:QxzA5IlA0

「澪ちゃんは?」
「澪は今日風邪で休みだ」
「え?休み?」

ムギと同じリアクションだった。
ちょっと可笑しい。

「うん、朝携帯に電話きた」
「りっちゃんの携帯に?」
「おう」
「りっちゃんの携帯だけに?」
「そう……なのかな?」

そうなのかな……?




25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:48:02.23 ID:QxzA5IlA0

「ほほう」
「な、なんだよ」
「妬けますなあ」
「んな!?」
「あらあら」
「そ、そんなんじゃねーし!」
「りっちゃん赤くなってる~」

唯はからかうように微笑んでる。
ムギまで。
まさか唯にこの私がからかわれる日が来ようとは……。

「みんなおはよ~」

そうこうしてる内にさわちゃんが化粧ばっちりの顔で微笑みながら教室に入ってきた。
朝から御苦労様です。
賑やかだったクラスメイトは会話を切り上げ、小走りで自分の席に向かっている。
私も3列目の一番前の自分の席についた。
頭の後ろで手を組みながら、さりげなく後ろを見たけど……やっぱり澪の席はからっぽだった。




26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:55:34.40 ID:QxzA5IlA0
―――
――


再び目を覚ました時にはもうお昼をまわっていた。
やっぱりだるく、頭が重い。
いつもなら学校で互いのおかずをつつき合っている時間だ。
今まさにみんなはそうして居るのだろうけど。

その時ぐうっと漫画みたいな音が鳴った。

「あ……」

そういえば朝から何も食べてなかったっけ。

「ちゃんと食事もとらないとな……」

階段を慎重に降りた私は、リビングに向かった。




27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:00:25.90 ID:sCN47Wyy0

「ママー?」

返事はない。
ちょっと不安になった。

「あ、テーブルの上に……」

置き手紙とお皿に乗ってラップに包まれたご飯があった。
不安を紛らわすために手紙を声に出して読んだ。

「今日はどうしても外せない用事があるから悪いけど出かけるね。
 何かあったらすぐに電話すること。
 ご飯はテーブルの上に置いたけど、一応お粥も作って冷蔵庫にいれておいたので、
 好きな方を食べてね。
 夕方には戻ります。」

ママ出掛けちゃったのか……。
ちょっと心細いな。
風邪をひいてると余計にそう感じちゃう。

結局テーブルにあったご飯を食べた。
お粥は夕方にでも食べよう。




28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:07:18.29 ID:sCN47Wyy0
―――
――


食事を終えた私は再びベッドに戻っていた。
熱をまた計ったけど、まだ38度をこえている。

「今頃みんなどうしてるのかな」

時計に目をやると、もう昼休みは終わって授業が始まってる時間だった。
今日の分のノートを誰かに見せてもらわないと。
頼りは……ムギか和だな。

でもわざと律のノートを借りて、悪戯してやるのもいいかも。
いつも私のノートに落書きをするお返しだ。
でもまあ……律に貸して色々な落書きが書き足されて返ってくるノートは嫌じゃない。
むしろそのノートを眺めて一人で楽しんでる自分がいる。
律と向かい合うと怒っちゃうけど。




31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:14:31.58 ID:sCN47Wyy0

寝返りをうって布団を顔まで掛けた。

「学校行きたかったなあ」

今更ながらそう思った。
休み時間ごとに誰かの机の周りに集まり、他愛のない話をする。
他愛ないけど大切で楽しい時間だ。
今日はその時間もちょっと遠くに感じる。
みんなや……律でさえも。
みんないるのに私がいない。
そう考えるとちょっと悲しい。

なんだろう。
ただ風邪をひいて学校を休んだだけなのに色々と考えてしまう。




33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:22:56.06 ID:sCN47Wyy0

今朝律に電話をしたことを思い出す。
律は何でもないっていってたけど、残念そうな感じだったかな?
だとしたらちょっとうれしい。
なんて、ちょっと思いあがってみる。

はっきり言ってしまうと学校へはみんなと一緒にいるために行ってるようなものだ。
授業は二の次……という訳ではないけど、勉強より大切な事ってこういうことだと思う。
少なくとも私にとっては。
みんなもそうだといいんだけど。

もう今日の時間は戻らない。
風邪ひいた位で大げさかな?
そんなことないよ。




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:28:27.63 ID:sCN47Wyy0
―――
――


退屈な授業が終わり、私達はいつもの部室にいた。

「紅茶とミルクティーどっちがいい?」
「ミルクティーで!」
「じゃあ、わたしも」
「わかったわ」

お洒落な食器に置かれたケーキ。
唯はミルクティーが淹れられるのを待たずに食べ始めている。

「おいし~」
「唯、ほっぺにクリーム付いてる」
「りっちゃん取って~」
「仕方ないなー」

ティッシュで唯のほっぺを拭いてると、梓が入ってきた。




38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:35:16.56 ID:sCN47Wyy0

「こんにちはー」
「あ!あずにゃん!」
「おーす、梓」
「もうすぐミルクティーがはいるわ」
「ありがとうございます」

一瞬置いて梓が言った。

「あれ?澪先輩は?」
「澪ちゃん今日風邪ひいて学校休んだんだよ」
「え?休み?」

梓まで同じリアクションかよ。
まあそうなるんだろけど。




39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:41:04.28 ID:sCN47Wyy0

「はい、ミルクティーよ」
「サンキュー」
「ありがとうございます」
「ありがとう!ムギちゃん!」

ミルクティーをすすりながらいつも澪が座ってる正面の席を見る。
一つ余ったケーキ。
今はボケても澪の的確な突っ込みは返ってこない。
みんなも心なしか、ちょっとおとなしい。

「……」
「……」
「……」
「……今日は……帰ろっか?」

ムギがちょっと控え目に提案した。




40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:48:00.59 ID:sCN47Wyy0

「そう……ですね」

いつもなら梓は練習云々とか言い出す所なんだろうけど、この時は同意した。

「ねえ、このあと澪ちゃんのお見舞いに行かない?」
「おー、そうだな」

一人でも行くつもりだったけど。

「でも、迷惑じゃないかしら……?」
「そうですね、大勢で押し掛けるのもどうかと……」
「大丈夫だって。澪が私達がお見舞いに来るのを嫌がると思うか?」
「ぜんっぜん!」
「だろ?」
「うん!」
「そうですね!」
「澪ちゃんの分のケーキも持っていくわ」
「でも風邪ひいてる人ってケーキ食べますかね?」
「……一応持っていくの!」




43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:54:21.30 ID:sCN47Wyy0
―――
――


私達は澪の家の前にいた。
家に澪だけしかいないなら勝手に入ってもいいけど、車があるってことは澪のお母さんが居るのかもしれない。
一応インターホンを押してみる。
合鍵の場所位知ってるんだけどね。

「はーい」と言う声がドア越しに聞こえる。
やっぱりいた。
ドアが開かれる。

「こんにちはー」
「あら、りっちゃん。いらっしゃい」
「こんにちはー」

唯、梓、ムギの声が綺麗にそろった。




44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:58:11.29 ID:sCN47Wyy0

「軽音部のみなさんね。いらっしゃい」
「澪のお見舞いに来たんですけど」
「そうだったの、上がって上がって」
「おじゃましまーす」

靴を脱ぎ、フローリングに上がる。
澪は2階の自分の部屋だろう。

「でも本当にみんなで行って大丈夫かしら……?」
「やっぱりそうですね……」
「だったら私が先に行って様子見てくるよ」
「そうしてくだせえ、りっちゃん隊員」
「はいはい」

唯を適当にあしらって階段を上がる。
ここはまるでもう一つの自分の家のようだ。




45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:02:25.40 ID:sCN47Wyy0

「りつー?」

扉を開ける前に澪の声が飛んできた。
ちょっと口元を緩めながら部屋に入る。

「よくわかったな」
「足音でわかるよ」

あれ?なんか前にもこんなことが……。

ああ、2年生の時の学園祭前に私が風邪をひいた時だ。
今は立場が逆か。




46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:06:59.15 ID:sCN47Wyy0

「律だって足音で私だってわかっただろ?」
「そーだったな」
「律だけ?」
「みんなもいるよ」
「え?みんな来てくれたの?」
「呼ぶか?」
「うん」

おーいと一階に向かって叫ぶと足音が階段を上がってきた。
扉がゆっくりと開く。

「澪ちゃーん?」
「みんな、来てくれてありがとう」
「調子はどうですか?」
「朝よりはだいぶ良くなったよ」
「よかったよ~」
「一応澪ちゃんの分のケーキ持ってきたんだけど……どうかしら?」
「ケーキか……」

澪はちょっとためらい、申し訳なさそうにしている。




47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:10:57.26 ID:sCN47Wyy0

「せっかく持ってきてもらって悪いけど、今ケーキはちょっと……」
「そうね」
「ごめん、ムギ」
「気にしないで、澪ちゃん」
「でも、ありがとう」

何やら唯がそわそわしている。
まあ、おおよそ検討はつくが。
澪も気づいてるようだ。

「ふふっ、じゃあ唯にあげるよ」
「え?いいの?」
「ああ」
「でへへ、すいやせんねえ」

わざとらしいな、おい。
まあ唯なら許されるかな。
梓とムギも笑ってるし。

そんな他愛のない時間が続いた。




48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:16:21.72 ID:sCN47Wyy0
―――
――


「じゃあ私達そろそろ帰るわね」

ムギがバッグを自分の方へ引き寄せながら言った。

「うん、今日はお見舞いに来てくれてありがとう」
「澪先輩、早く治して学校に来てくださいね」
「ちゃんと寝なきゃだめだよ!澪ちゃん!」
「治ったらケーキ食べましょう」
「うん、わかった」
「私はもう少しいるよ。家も近いし」
「じゃあまた明日、学校で」
「失礼します」
「ばいばーい」

それぞれ澪に声をかけて最後に部屋を出た梓が扉を閉めた。
足音が下へ降りて行く。
部屋には澪と私だけ。




50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:20:30.09 ID:sCN47Wyy0

「しっかし澪が風邪とは珍しなー。朝も言ったけど」
「そうだな」
「一日寂しかったか?」

ちょっと悪戯っぽく言ってみる。

「べ、別にそんなことないよ!」
「ふーん」
「そういう律はどうだったんだ?どうせバカ騒ぎしてたんだろ?」
「私は……ちょっと寂しかったかな」
「え?」

後半ちょっと小声になってしまった。
聞き返した当たり澪は聞こえなかったのだろうか。




51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:25:38.79 ID:sCN47Wyy0

「なんでもない」
「……」

なんでもないって言っちゃった。

「今日は練習しなかったよ。1人居ない状態で練習しても仕方ないし」
「今日も、だろ?」
「そうでしたね……」
「ふふっ」
「なんで笑うんだよー」

澪と二人だと、いつもこういうどうでもいい会話が延々と続く。
どうでもいいのに延々と続く。
どうでもいいのに延々と続けられる。
かと言って意識して続けてるわけではない。
すごく自然に。
これって特別なことなのかな。




52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:28:39.24 ID:sCN47Wyy0

「それより、風邪うつっちゃうぞ?」
「私は無敵だから風邪ひかないもん」
「2年生の学園祭前にひいてただろ」
「あれはちょっと油断してたんだよ」
「なんだそれ」

こうして電気もつけずに、夕日だけに照らされた薄暗い部屋で静かに流れる時間が心地よかった。




53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:32:55.34 ID:sCN47Wyy0

――
―――

唯達が帰って律と二人だけになった。

「しっかし澪が風邪とは珍しなー。朝も言ったけど」
「そうだな」
「一日で寂しかったか?」
「べ、別にそんなことないよ!」
「ふーん」
「そういう律はどうだったんだ?どうせバカ騒ぎしてたんだろ?」

図星をつかれて皮肉を言ってごまかした。
皮肉になってるかはわからないけど。




54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:36:09.79 ID:sCN47Wyy0

「私は……ちょっと寂しかった」
「え?」
「なんでもない」
「……」

律は小さい声で言ったけど、しっかり聞こえた。
たぶん、私だけに向けられた言葉。

「今日は練習しなかったよ。1人居ない状態で練習しても仕方ないし」
「今日も、だろ?」
「そうでしたね……」
「ふふっ」
「なんで笑うんだよー」

思わず笑っちゃった。
その時になると練習練習って言っちゃうこともあるけど、ずっと「ミーティング」してるのも、いいかなって思う時もある。
こんなこと口には出せないけど。




55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:38:48.98 ID:sCN47Wyy0

「それより、風邪うつっちゃうぞ?」
「私は無敵だから風邪ひかないもん」
「2年生の学園祭前にひいてただろ」
「あれはちょっと油断してたんだよ」
「なんだそれ」

こうして律といると、今日1度無くした時間を取り戻せた気がした。
薄暗いのに電気をつけてないのも、今気付いた。




58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:42:50.90 ID:sCN47Wyy0
―――
――


澪の家を出て、自分の家への道を歩いた。
もうすっかり暗くなっている。
私の家と澪の家を結ぶこの道は何度歩いたことか。
もう目を瞑ってでも歩ける。

私と澪は幼馴染だ。
周りの認識はそうだろう。
でも実際はどうなのだろうか。
以下ではないけど、以上なのかはわからない。
そんな微妙な距離。

どうしたいこうしたい、て言う思いは特にないのかもしれないけど、お互いこの距離を変えようとしない。

別に意識してるわけではないけど、それが自然な事になってるから……。




59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:47:07.55 ID:sCN47Wyy0
―――
――


律が帰ったあと、私はベッドに横になり、暗くて見えない天井を見つめていた。
昼間は私がそこにいなくても進んでしまう時間を考えるとちょっと悲しかった。
でも……心配なかったみたい。

みんなが……律が隙間を埋めてくれた。

律と話していた時は体のだるさも、頭の重さも忘れてた。
明日は学校に行きたいな。

唯の言う通りしっかり寝なきゃ治らない。

だから……今夜はおやすみ。




60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:50:31.45 ID:sCN47Wyy0

―――
――


朝起きると、体のだるさが消え、重く感じた頭も軽くなっていた。
熱も下がってる。

よかった。
今日は学校に行ける。

軽い足取りで階段を降りると、ママが朝食の準備をしていた。

「あら?風邪は治ったの?」
「うん。今日は学校に行くよ」
「そう、よかったわね」




61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:53:35.06 ID:sCN47Wyy0

一旦部屋に戻り、教科書などの準備をしているとベッドに置いてある携帯が鳴った。
相手は……律だ。
体調を聞く電話かな?

「もしもし」
「みおー……」
「おはよう、今日は学校いけるよ」
「みおー……」
「ん?どうした?」
「風邪ひいた……」
「ええ!?」

どうやらうつしてしまったようだ。
今度は私が律の家に行ってやらないと。
前に私が律のお見舞いに行ったみたいに。
昨日、律がお見舞いに来てくれたみたいに。


                                          
                                        おわり




62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:54:07.34 ID:ugakB7610





63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:54:36.63 ID:sCN47Wyy0

一応終わりです。

読みにくくてすまん。

ありがとうございました。





64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:55:11.96 ID:iZmLbWTp0

丁寧な文章で読みやすかった




65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 01:55:20.73 ID:4ZcXNkVPP
いい話だ…涙で目の前がぼやけるが俺はトラックのアクセルを踏み込んだ








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[ 2010/09/06 00:12 ] けいおん | TB(0) | CM(5) はてなブックマークに追加
良いねー。
[ 編集 ]
途中で全く同じ会話してるのはミス?
若干書き直してるところがあったけど
こういう山無しのSSもいいな
[ 編集 ]
踏み込むな踏み込むなー
[ 編集 ]
同じ会話のところは律視点→澪視点って変ってるでしょ
[ 編集 ]
やっぱこの2人はいいね
[ 編集 ]









 

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